Melting Wet
[Fortune Arterial short story]
「あ」
声。
いつものように視線を回せば、そこで起きているのはやっぱりいつものことであり。
「……また故障したわ」
「しれっと言うな!
っていうか、アプリケーションの強制終了の仕方教えたろう?」
「終了したんだからいいじゃない」
よくねえよ。
……というわけで、夏休みの昼下がり、いつものように監督生室での仕事中。会長をも含めた誰もが仕事に集中し、キーを叩く音と書類をめくる音だけが響いていた緊迫した空気を一気に破砕させたのは、桐葉のいつもの呟きだった。
誰もが疲れを感じ始めていたのか、俺がボールペンを手放すのと、副会長がぐっと伸びをするのと、会長がぐてっと背もたれにへたり込むのはほぼ同時。キーを叩く音が止まったことから東儀先輩がパソコン操作を止めたことも分かり、給湯室の扉が開いたのはきっと白ちゃんだろう。
「あーあ、今の今までこの部屋の作業効率はフルパワーだったのに」
「文句ならパソコンに言って。私の責任じゃないもの」
「はいはい。で、今度は何をしたんだ?」
「何もしてないわ」
「……」
溜息を吐きつつ、立ち上がって桐葉の元へ。とりあえずパソコンの電源を入れ直し、何をやったのか確認することにする。
ちなみに桐葉も、OS開始画面の効果音が鳴ったときに安堵する様子を見せるだけ、悪いと思っているようではあるらしい。
「しかし、どうして紅瀬ちゃんのときだけあんなに落ちまくるんだろうね?
俺は多少乱暴しても、フリーズしたことはないけどな」
「私も無いわね。よっぽど嫌われてるんじゃないかしら?」
「紅瀬ちゃんが? パソコンに?
はっはっは、まさか。瑛里華の暴力的な操作にすら従うパソコンが、紅瀬ちゃんを嫌うなんてそんなこと――――いや待て瑛里華、ボールペンは筆記用具であって突き刺す武器じゃッ!?」
背後のやかましい声は無視。
パソコンは一通りエラーチェックも終わり、通常のデスクトップ画面へ戻ったところだ。
液晶が新しいせいか、あるいは暗い壁紙のせいか、桐葉の顔がくっきりと映り込んでいる。
「それじゃ、フリーズしたのはどういう操作をしてたときか、やってみせてくれ」
「だから、何もしてないわ」
大嘘こきやがった。
「仕事も?」
「仕事はしてたわ」
「じゃあそれを――」
「でも、それで止まったわけじゃないもの」
「だーかーらー……ん?」
俺は桐葉の後ろに立っているのだが、桐葉はなぜか振り向いてくれはしない。
パソコンの操作をしているのだろうかと思っても、画面にはウィンドウ一つ開いていない。キーを叩いている様子も、マウスを動かしている様子もない。
はてどうしたのか、具合でも悪いのかとよくよく画面を見てみれば。
映り込んだ桐葉の顔、どことなく不機嫌さを形作っているそれは。
「もしかして、恥ずかしいのか?」
「……!」
途端に、どこぞの瞬間沸騰器のように真っ赤になる桐葉。
どうやらその機械音痴っぷり、人並みに恥ずかしさを持つくらいの感性はあるらしい。そういうのは全然気にしなさそうな性格だったはずなのだが、変われば変わるものだ。少しばかり嬉しくなる。
「笑った」
「……へ?」
「いま、笑ったでしょう?」
「え? あ、いや、別に桐葉のことを笑ったわけじゃなくて。
なんていうか、微笑ましいというか、可愛らしいというか」
「――ッ!!」
何を言ってるのか俺は、と気付いたときにはもう遅く、桐葉は耳まで真っ赤になって俯いてしまった。
こりゃもうエラーどうこうを聞くのは無理だろう。とりあえずパソコンを終了させようと、桐葉に覆い被さるようにしながらマウスを操作しているうち。
「あーあー、暑いわね、兄さん。何かしら、この局地的温暖化は」
「いやもうまったく。どうやら100円払ってまでイチャイチャしたいらしいね、白昼堂々と。
いいかい白ちゃん、ああいうのをバカップルっていうんだよ」
「バカップル……ですか? 仲が良くていいことだと思いますけど。
その、もうちょっと控えた方がよろしいかとは思いますが」
「白。伊織の言うことを真に受けるな。
それとあの二人は放っておいて、自分の仕事に集中した方がいい」
なんというかもう、言われ放題である。ほっといてほしい。
ちなみに桐葉は、その会話を聞いて更に深々と頭を沈め始めていた。慰めるつもりでぽんとその頭に手をのせてやると、ぎぎぎ、と首を傾けて俺の方を睨んでくる。そこにいつもの鋭さは全くない。真っ赤になったまま怒りを表現しようとしても、可愛く映るだけなんだが。
なんとか微笑まないようにしつつ、液晶に目を逸らしてパソコンをとりあえず終了。
と。
「しかし、パソコンが落ちるのは紅瀬だけの責任でもない。
ちょうど伊織と、いい加減買い換えようかと話していたところだ」
生徒会財務の意外な声が発せられて。
「あーあ、もう言っちゃうのかい、征?
俺はもう少し遊びたかったんだが」
「お前が何を思おうが勝手だが、仕事に支障が出るようでは困る」
「どういうことですか、東儀先輩?」
「ああ」
東儀先輩はこっちに向き直り、言った。
「紅瀬のフリーズはともかく、型式が古いのは確かでな、セキュリティも含め何かと都合が悪い。
近いうちに新しいパソコンを買う予定だから、それを二人で見てくるのもいいだろう」
○ ○ ○
というわけで週末、日曜日の昼過ぎ。
桐葉の携帯を買いに出たいつかのように、俺たちは揃って海岸通りへと赴いた。
あのときあった微妙な距離も極度の緊張も今はなくて、どちらから言いだしたわけでもなく手を繋ぎ、のんびりと街の賑わいを見て回る。
一通り散歩めいたことを楽しんだ後、海岸通りのほぼ中央辺り(島唯一の商業地区だけあって、端から端まではかなり長いのだ)で足を止めて。当然、手を繋いでいる桐葉はこちらを振り返った。「どうしたの?」とでも言いたげな表情。
「さて桐葉、それじゃどっか行きたいところは?」
「……? パソコンを見に来たのだから、そのお店に行くんでしょう?」
「いやいや」
そりゃまあ、桐葉に「仕事をサボってまでデートを満喫する」という発想を求めちゃいないけれど。
というか、桐葉の頭に今日のこれがデートだという認識があるかどうかも怪しいものだ。単なる生徒会の買い出し、と割り切っていかねない。
「それともパソコンというのは、その手の専門店以外にも置いてあるものなの?」
「むしろ電機屋のが多い今じゃ、専門店のが珍しいくらいだけど……ああまあそれはともかくさ。
パソコンを選ぶのなんてそう手間じゃないし、後回しでも充分じゃないか。だから、せっかくここまで出てきたんだし、先にどっか一緒に行こうかなと。それとも行きたくない?」
「……貴方が行くというのなら、行きたくないわけがないでしょう?」
相変わらずの間接的な物言い。それでも、こちらをやや睨むように見てくるその表情、赤い頬は言葉よりずっと直接的で。抗議の意志か、握った手の力も少しだけ強くなっていた。
それにはやっぱり、頬が緩まざるをえない。そしてまた、それをどうとったのか、ますます桐葉は頬を赤らめ瞳はその鋭さを増し。
「貴方、最初からそのつもりだったのね?」
「俺だけじゃないだろ。
考えてもみろって。どうしてパソコンを選ぶのに、桐葉を連れていく必要があるんだよ?」
「それは、私がパソコンを……いえ、違うわ。パソコンが、私の使っているときによく止まるからじゃないかしら」
なんという無駄な言い換え。
「それにしたって、桐葉、パソコン見てどれがいいとか分かるのか?」
「え? あ……」
「そういうことだ」
誰だって、桐葉にメモリがどうとかCPUがどうとか言って、分かるだろうと思うはずがない。
それには当然東儀先輩だって含まれていて、だからつまりはそういうことなのだ。
桐葉は少し困ったような顔をしていたものの、しかし異論はないようで、ふう、と一つ呆れたように溜息を吐いた。
それが形だけの「私冷静になりました」的なポーズであることが分かったのは、ここ最近だ。いわゆる照れ隠しというやつである。
「それで? どっか行きたいところは?」
改めて聞くと。
握った手、腕ごとぐいっと引っ張られて、桐葉はぐっとその身を寄せてきた。俺の腕は桐葉に抱き留められる形になる。
「貴方と一緒ならどこだって構わないわ」
「……面と向かって言うかな、そういうこと」
「お返しよ」
言って、ぷいっと顔を背ける。
……しかし、言ってる本人が俺よりずっと赤面してちゃ、お返しどころか自爆にしかなってない気もするのだが、まあそれはそれで良しとしよう。
○ ○ ○
携帯を買いに来たとき、桐葉を連れていこうとした場所が四つほどあった。
ボウリングと、カラオケと、映画と、そして――
「………………………………」
ゲームセンターの中に入った途端、桐葉の意識は一気にその雰囲気に圧倒されてしまったらしい。
繋いだ手をくいくいと引っ張っても応答はなく、目の前で手のひらを振るとようやくはっと我に返った。
「そんなに驚かなくてもいいだろうに」
「……初めてだもの、こういう遊戯場は」
遊戯場……。
まあ、分からなくもない。
最近では家族向けをターゲットにしたゲームセンターも増えてきたようだが、基本的な客層はいわゆる若者たちだ。
暗めの店内、明滅する照明、自己主張し合うかのように鳴り響く各々のゲームの音、どことなく漂う煙草の香り。どれも桐葉からすれば縁遠いものに違いない。
しかしまあ、だからこそ良い刺激になるんじゃないかとも思えるもので。
「ま、ビデオゲームは無理だろうし、UFOキャッチャーでもやってみるか」
「ユーフォー……?」
「やってみれば分かる」
往々にして、その類のゲームというのは客寄せのために入り口近くに配置されているものだ。
来店直後の俺たちの目の前にあったのもまさにUFOキャッチャーそのもので、寮生活ではそう使うことのない財布から100円玉を取り出し、機械へと投入する。
投入音と共に、クレジットを示すランプが点灯。100円2クレらしい。
まずはやってみせることにする。
ざっと景品を見渡し(ちなみに平積みだった)、ほぼ中央に位置するお菓子袋に狙いを定めた。分かりやすかろうという配慮からだ。
側面から奥行きを確認した後、つつつ、とクレーンを動かしつつ説明を試みる。……結構滑るな、この台。
「で、ボタン2つを使って、うまく景品を掴む。シューター……ああえっと、左手前の穴に落とすことができれば、景品を貰えるって仕組みだ」
「座標軸を合わせるということでしょう? それなら簡単に取れそうなものだけど……あ」
「――とまあ、そう単純なものでもないんだな」
すてん、と引っかかりかけた景品があえなく台の底へと沈む。
「……どうだ、やってみないか?」
「そのくらいなら私にもできそうね」
「筐体がフリーズしないことを祈るばかりだ」
そうして桐葉に正面を譲る。ボタンには矢印が書かれているから、いくら桐葉といえど間違えることはないだろう。
特に前傾姿勢を取ることもなく、いつものように凜と背筋を伸ばした体勢のまま、桐葉はじっと筐体内を見つめる。
……ちなみに、だいたい予想はついている。
「景品というのは、どれでも構わないのかしら?」
「取れればどれでも。もっとも、最奥のは見せ物だからクレーンが届かないだろうが」
「重すぎても大きすぎてもダメ、ということね?」
「そうなるな」
一応取れるテクニックもあるにはあるが、まあそれはともかく。
桐葉はしばしじっと景品の山を見つめた後、くくっとクレーンを動かし始めた。横移動はそうして、案の定俺の予想の場所で止まる。
狙っているのは、珠津島のマスコットの……ええとなんだっけ、なんとかっていうぬいぐるみだった。生徒会室でもらったやつの別バージョンといったところ。
そうして奥へと移動していくクレーン。
それを見つめる桐葉の瞳はまさに真剣そのもので、移動を止め、ぐーっとクレーンが下がっていくのを見ている様は面白くもあり可愛らしくもあった。
そうして。
「あ」
呟きが漏れたのは、クレーンが再下段まで接地した直後。クレーンのツメはぬいぐるみに引っ掛かることなく閉じてしまい、カラのクレーンがむなしくシューター上部へと戻っていく。
「…………」
あ、悔しそう。
「孝平」
「あんまり熱中しすぎるなよ?」
言いつつも、珍しく素直に続きを要求してきたその恥ずかしげな表情に免じて、200円ほど入れてやる。どうやら200円だと5クレになるらしい。
「さ、どうぞ」
桐葉は口を真一文字に閉じて、その鋭利な瞳をぬいぐるみ――パル子ちゃんへと注ぎ始めたのだった。
○ ○ ○
ゲームセンターを出る頃には、既に日没を過ぎていた。
よくもまあこれだけ長く居たもんだと思う。ゲームセンターの中でも探せば桐葉にもできるようなものがいくつもあって、体感ゲーム系はもちろん、ビデオゲームなんかでもクイズのそれにはえらく熱中してしまっていた。
桐葉はつまらなければつまらないとはっきり言うだろうし、それを言わずにここまで遊び倒したということは、やはり面白かったということなのだろう。
で、再び俺と手を繋いだままゲームセンターを出て行く桐葉、その俺と逆の腕にはきっちりと件のぬいぐるみ、パル子ちゃんが抱え込まれている。
桐葉の服の上からでも分かる豊かな胸と、露出させている腕に挟まれて大層いいご身分だ。
「どうかした?」
「いや、まあ、なんだ。ゲーセンもいいものだろ?」
「そうね。貴方となら、たまには来てみるのもいいかもしれないわ」
言って、ぎゅっとパル子ちゃんを抱え直す。
昼間は青々としていた空も紅というよりはむしろ夜の色を帯び始めていて、街を煌々と照らし出した電灯とは対照的に、いくぶんか肌寒くもなってきた。
そんなどちらから言うでもなく歩き始めた帰り道、海岸通りの出口付近。
誰彼どきとはよく言ったもので、俺はかなり近くになってようやくその姿に気が付いた。副会長だ。
「よ、副会長。そっちも買い物か?」
「あら、支倉くんに紅瀬さん。
ちょっとね、アロマオイルが切れちゃって。二人は――って、言うまでもないか
「ええ、言われるまでもないわね」
ちょっと挑発ぶった副会長の言葉に、平然と答えを返す紅瀬さん。
副会長の視線がパル子ちゃんや、俺と繋がった手に向いていることを知っていてなおこの仕草なのだから、もはや何も言うまい。
できればここで喧嘩するなよとか、俺に話を振らないでくれよ、などとそんなことばかり並べ始めた俺の脳内など気にする素振りも見せず、副会長はぱっと視線を俺へと向けてきて。
「それで? めぼしいものは見つかった?」
めぼしいもの? はて?
「……パル子ちゃん?」
「どんなボケよ。パソコンのことに決まってるでしょう。言うまでもなく、今日はパソコンを見に来たんでしょ?」
「……………………」
「……………………」
「……………………?」
思わず桐葉と目を合わせる。
多分、俺も桐葉と同じような表情をしていたに違いない。そしてはたと気付けば、横からはどことなーくにやにやしてる感じの視線がちくちくと俺たちの頬を突いていて。
……いや、だから、ほら、ねえ?
「……忘れてたのね、二人して」
そしてこれまたおそらく、顔が紅潮したのも同時だったに違いあるまい。桐葉の顔がみるみる赤くなっていくのを見ていると同時、俺の方も冷や汗やら恥ずかしさやら何ともつかぬ発汗を感じ取っていた。
「えっと、これは、その」
「はいはいごちそうさま。いいわよ、別に休日に二人が何していようと。
でもねえ、週明けになってもまだパソコンを見てなかったりしたら、勘ぐる兄さんにうっかり口が滑っちゃうことも、ないとは言えないかもね?」
「つまり、今から見てこいと」
「そうは言ってないけど」
副会長はなおも笑顔をたたえながら、今度は桐葉の方へと目を向けた。
対する桐葉、いつものように睨んでみるも、でもやっぱりその視線の鋭さは随分と弱くなっている。というか、頬が朱色のままでは怖さも何もありはしまい。
「ま、いいわ。紅瀬さんに免じて、今日はこのくらいにしといてあげる。
それじゃ、また明日ね。電機屋さんで洗濯機やら冷蔵庫やらを見たりしないでよ?」
笑いながらそうジョークを飛ばして、副会長は俺たちが帰ろうとしていた方向、つまりは寮の方へと戻っていった。
それをしばらく、無言のまま見送って。
「さて、どうしようか」
「……行くしかないでしょう?」
「それもそうか」
まだ赤みの引かない桐葉の表情に苦笑しつつ、ぐっと繋いだ手を握り直して。
桐葉はまた逆の手にパル子ちゃんを抱えたまま、俺たちは当初の目的である電機屋へようやく向かったのだった。
○ ○ ○
翌日。
「おや、面白いものを見てるね、支倉君。
パンフレットか何かかい?」
監督生室。
仕事も一段落し、のんびりと白ちゃんの淹れてくれたお茶を飲みつつ、仕事で外回りに行った副会長を待ちながら桐葉の机で小冊子を広げていると、そんな声が後ろからかかってきた。
「ええ、ちょっと店でもらってきたんです。まだ買いはしないですけど」
「何のパンフレットかな?」
「いやまあ、それは――」
「白物家電です」
答えたのは桐葉。
……しかしその言い方、ちょっと最近は耳にしないような気も。
とはいえこっちもこっちでそれなりに長い人生を歩んでいる会長、「へえ」なんて意味ありげに笑って返してきた。
だから言いたくなかったんだけど。
「なあ征、うちにもそろそろ必要じゃないか? 生活家電」
「お前自身の家のことなど俺は知らんし、監督生室のことを言っているなら予算オーバーだ」
「ちぇっ、つれないねえ」
「それより支倉、それに紅瀬」
冷蔵庫は観音開きがいいかどうかなどと考えていると、急に話の矛先が俺たちへ。
「なんです?」
「家電ということは、電器店に行ったんだろう?
パソコンは何かいいのがあったか?」
「……………………」
「……………………」
「……なかったのか?」
俺と、そして机でパンフレットを流し見ていた桐葉の身体が面白いように硬直する。
東儀先輩の不思議そうな表情が戻らないうち、「ただいまー」と副会長が扉を開けて帰ってきて。
「ねえ瑛里華、ちょっと見てくれよ」
「何、兄さん。どうせまた下らな――」
副会長の視線が、パンフレットでぴたっと止まる。
にやにやしている会長、不思議そうな東儀先輩、身体の動かない俺、どことなく赤い顔を俯かせている桐葉。
その様子を見て、おそらくは全て悟ったのだろう。
「……はあ。
この温暖化、しばらくは続きそうね」
心底呆れたというような表情で、副会長は溜息混じりにそう呟いたのだった。
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